経理や総務などのバックオフィス業務にはさまざまな課題が存在しますが、その中でも社内からの問い合わせ対応は担当者にとって大きな負担であり、早急に解決すべき重要な問題とされています。ある調査によれば、約4割の企業がデジタル化や効率化を進めたい業務として「社内問い合わせ」や「電話・受付対応」を挙げており、コア業務に集中するためにもこれらの業務の効率化は必要不可欠です。こうした問い合わせ対応や電話受付の効率化において、RAGを活用したチャットボットの導入が非常に有効な解決策として注目されています。本記事では、RAGを活用したチャットボットを導入することで、バックオフィス業務がどのように改善されるのかをご紹介します。
バックオフィスの課題
バックオフィス業務において、とくに大きな課題の1つが「社内からの問い合わせ対応」です。日常的に発生する問い合わせは、担当者が自身の業務を中断せざるを得ない状況を引き起こし、回答に時間がかかることも少なくありません。また、同じ質問が異なる社員から繰り返し来ることも多く、この対応が本来注力すべきコア業務の効率を大幅に低下させます。さらに、新しい社内規程や条例への対応も業務負荷を増大させる一因となっています。
また業務の属人化も深刻な問題で、ベテランの担当者が長期休暇や離職をする場合、代わりの担当者がなかなか見つからないこともあります。また、見つかったとしても業務知識の不足から、さらに対応の効率が下がってしまうことも考えられます。こうした状況は担当者の精神的・肉体的な疲弊にもつながり、バックオフィス全体のパフォーマンスを低下させます。
月末や期末に集中する問い合わせ
月末や期末には経費精算や事務処理、各種申請が増加し、それに伴ってバックオフィスへの問い合わせも集中します。こうした時期は、問い合わせを受ける担当者自身の業務も忙しくなるため、対応の負荷が一層増大します。忙しいとついつい「社内規程をよく読んでください」との返答をしがちですが、これは社員の不満感を増大させることにつながりかねません。
新入社員からの問い合わせ
新入社員からの問い合わせは、とくに入社後の上期(4〜9月)に集中することが多く、業務や申請に不慣れなため対応には特別な配慮が必要です。先輩社員とは異なり、新入社員には基本的な業務知識が不足しているため詳細な説明や丁寧な対応が求められるのです。また、新入社員から質問を受けた先輩社員がさらにバックオフィスに問い合わせをするケースも少なくありません。
テレワークでの問題
テレワークの普及に伴い、オンライン通話やチャットを使った問い合わせも急増しています。社内では横にいる同僚に聞けることも、テレワークの環境下ではバックオフィスに直接問い合わせが来ることが多いのです。テレワークでは、対面での対応と比べて質問への回答により多くの時間と手間がかかるため、バックオフィスの業務効率がさらに低下する一因となっています。とくにテキストでのやり取りでは説明が複雑になりがちで、追加の質問が発生することも少なくありません。このような状況では担当者は本来の業務に集中できず、業務負荷が増大します。
このような問い合わせ対応の負担を軽減するためには、迅速かつ的確に対応できる仕組み作りが必要です。効率的な業務環境を整えるためにも、仕組み作りにはデジタルツールの活用が有効な解決策となります。
RAGを活用したチャットボットの導入
上記のようなバックオフィスへの問い合わせ対応は、RAGを活用したチャットボットを導入することでその負荷を軽減できます。
RAGとは
RAG(検索拡張生成)とは、社内のドキュメント等を元にしたデータベースから欲しい情報を検索し、その中から関連性の高い情報を選択して、生成AIによって回答を生成するという「検索→選択→生成」のプロセスを経て回答を作る技術です。この手法により、通常のLLM単独では不可能な企業独自の情報や、最新情報を取り扱うことが可能となります。
たとえば、RAGをバックオフィス業務に活用する場合、社内規程や申請フローなどの独自情報を外部データとして追加することで、社内からの問い合わせ対応が可能となります。これにより、一般的な業務に関する質問だけでなく、組織特有の手続きや規程に関する具体的な回答を迅速かつ正確に提供できるため、業務効率を改善することができます。
RAGを活用したチャットボットと従来型チャットボットの違い
回答に利用するデータの違い
従来型チャットボット:
利用するデータはFAQなど、質問と回答が組み合わさったQ&Aデータです。さらに、精度を高めるためにキーワードや同義文などを登録する場合もあります。事前にこうした知識データやルールを作成するには、時間と手間がかかります。
RAGを活用したチャットボット:
マニュアル、製品仕様書、問い合わせ履歴などの社内にあるドキュメントを利用できます。Q&Aデータを作成する必要がないため、事前にデータを用意する負担が軽減されます。
メンテナンス性
従来型チャットボット:
Q&Aデータを定期的に更新する必要があります。たとえば、ログを分析してチャットボットが回答できなかった質問を特定し、それに対応するQ&Aを新たに作成してデータベースに追加する必要があります。また、古い情報を削除したり、既存の回答を最新情報にもとづいて修正したりする作業も発生します。これには人手が必要であり、運用コストが高くなりがちです。
RAGを活用したチャットボット:
元となるドキュメントの内容が変更されたり、新しいドキュメントが追加されたりすると、データも更新され、チャットボットの回答にも即座に反映されます。これにより、手動でQ&Aを追加・修正する必要がなく、メンテナンスの手間が軽減されます。
回答精度とハルシネーションリスク
従来型チャットボット:
事前に登録されたQ&Aデータを基に、言葉の揺らぎを吸収しながら比較的高い精度で回答可能です。ただし、登録外の質問には対応が難しく、データ内に適切なものが見つからなかった場合、無回答となります。一方で、人手で作成されたQ&Aデータ内の回答文をそのまま利用して応答を行うため、回答の一貫性と正確性が保たれ、誤った情報を提示するリスク(ハルシネーション)はほぼありません。
RAGを活用したチャットボット:
登録されているドキュメント群から関連情報を広範囲に検索し回答を生成するため、幅広い対応が可能です。また、複雑な質問や新しいトピックにも対応できます。ただし、生成型AIの特性上、情報の誤解や不適切な文脈によるハルシネーションが発生するリスクがあります。これを軽減するためには、信頼性の高いデータソースを使用し、回答生成に利用する情報の抽出精度を高めるなどの工夫を行う必要があります。
※イクシーズラボ社では、従来型のチャットボットとRAG型チャットボットそれぞれの良い部分を組み合わせ、ハルシネーションを低減する工夫を行っています。
RAGを活用したチャットボットの利用イメージ
ではRAGを活用したチャットボットの利用例にはどのようなものがあるのでしょうか?
人事部や総務部への問い合わせ
人事部や総務部へは、社内から業務上の手続きや勤務に関する問い合わせが常に寄せられますが、就業規則や賃金規定などの社内規程をRAGの参照データとすることでそれらの質問に自動で対応できるようになります。
たとえば育児休業や出産手当などに対する質問もよくあることでしょう。
育児休業や介護休業に対する規程は、各社でその内容は違います。今までこのような質問は人事担当に直接聞くか、社内規程を探して自分で内容を確認するしか方法はありませんでしたが、RAGを活用したチャットボットであればその会社の規程に合わせた回答を迅速に得ることができます。
情報システム部への問い合わせ
情報システム部の担当者は、社内のサーバーやネットワーク、PCの管理を一手に引き受けており、日々さまざまな質問を受けています。たとえば、「メールの設定方法」「PCを社外に持ち出す際の手続き」「ネットワークの接続トラブル」などが主な例です。
こうしたよくある質問には、RAGの活用が効果的です。メール設定マニュアルやPC利用マニュアルを参照データとして登録することで、質問への自動回答が可能になります。たとえば、メール設定に関する質問では、IPアドレスやDNSサーバーの設定手順を正確に案内でき、さらに情報機器の利用規程についても適切に回答できます。この仕組みにより、情報システム部への問い合わせ件数を大幅に削減できることが期待されます。
また、トラブルが発生した場合でも迅速に解決方法を得られるため、社員は本来の業務に早く戻ることができます。結果として、社内全体の生産性向上にもつながります。
RAGを活用したチャットボットには、回答の根拠となるドキュメントを提示する機能を持つものがあります。この機能により、必要に応じてドキュメントを直接閲覧できるため、社内に蓄積されたマニュアルや資料といったナレッジを効果的に活用することが可能です。また、この仕組みを活用することで、社員間でのナレッジ共有がスムーズになり、情報活用の効率が向上します。
※チャットボットのイメージは、CAIWA Service Viiiのチャット画面です。
導入後の効果
RAGを活用したチャットボットを導入することにより、バックオフィスの業務には以下のようなメリットが生まれます。
バックオフィス業務の効率向上
問い合わせ対応時間・負荷の軽減
チャットボットは、繰り返し発生するよくある質問や簡単な手続きへの質問に自動で回答できるため、バックオフィスの担当者が個別に対応する時間と労力(負荷)を大幅に削減します。
コア業務への集中
チャットボットが日常的な問い合わせに対応することで、バックオフィスの担当者はより高度な業務や本来の業務に集中できます。
属人化の解消
チャットボットやRAGに専門的な知識を格納することで、特定の従業員やベテランに依存することなく、質問への回答が可能になります。これにより、退職や異動による業務の停滞も防げます。
正確な情報の提供
RAGを活用したチャットボットは、常に最新のデータベースを参照するため、正確で一貫性のある情報を提供できます。これによりヒューマンエラーが発生しにくくなり、誤情報の提供や誤解を減少させることができます。
新規情報や更新のメンテナンスが楽になる
RAGの情報を一元管理することで、新しい情報の追加や既存の情報の更新が容易になります。担当者が手動で各部署に情報を周知する手間が省け、常に最新の情報が社内全体で共有されるようになります。
社内資料の有効活用
RAGを活用することは、社内文書の有効活用にもつながります。社内には担当者がこまめに更新しているものの、うまく活用されていなかったり、存在すら知られていなかったりする文書が存在しているはずです。これらを情報源としてRAGのデータベースに格納することで、埋もれていた社内資料が有益な情報に生まれ変わります。
問い合わせ対応効率の向上(利用者のメリット)
RAGを活用したチャットボットの導入は、バックオフィスばかりでなく利用者にもメリットがあります。
時間を気にせず問い合わせできる
チャットボットは24時間365日稼働しているため、時間帯や曜日を気にせずに問い合わせができます。
出張先やテレワークでも問題なし
会社のネットワークにさえアクセスできれば、出張先やテレワーク先からでも利用できます。
何回でも同じ質問ができる
相手が人間であると何度も同じような質問をするのは気が引けますが、チャットボットであれば納得するまで質問を繰り返せます。
正確かつ新しい情報の入手ができる
人間の場合は誤情報や古い情報を回答してしまう可能性もありますが、情報が一元管理され、かつしっかりとメンテナンスされているチャットボットの場合は、正確かつ新しい情報を回答してくれます。
注意点
上記のようにメリットの多いRAGを活用したチャットボットですが、注意点がまったくないわけではありません。とくに以下の点には注意が必要です。
RAGであっても誤情報を提示する可能性はゼロではない
RAGに格納されている情報以上の質問があった場合には、生成AIの特徴としてハルシネーション(AIの幻想)が発生する可能性があります。そのためAIの回答については、ファクトチェックできる仕組みがあると良いでしょう。
元データの正確性は重要
RAGの精度を高めるには、元データが正確であることが欠かせません。また、常に正しい回答を得るためには、データの管理や更新、メンテナンスが重要です。これらの作業には人的コストがかかる場合があります。そのため、元データを簡単に管理できる機能が必須と言えます。
株式会社イクシーズラボが提供するCAIWA Service ViiiのRAGなら、これらの問題を解決する仕組みが整っています。
CAIWA Service Viii Powered by ChatGPT API(RAG)について
CAIWA Service ViiiのRAGは、大きく2つの機能をもっています。
ChatGPT応答機能
CAIWA Service ViiiのRAG は、CAIWA(独自開発AI)とChatGPT(生成AI)の回答を比較できます。この機能は誤情報を提示するリスクがないCAIWAと、広範な対応ができるChatGPTの利点を合わせ、いわば両方の「いいとこどり」を実現した機能です。また回答の精度を上げるため、RAGは回答生成に利用するドキュメントを1つに絞り込みます。また生成元ファイルも表示されるので、必要に応じてファイルの内容を確認しファクトチェックすることが可能となっています。CAIWA Service ViiiのRAG は、これらの機能により精度の高い回答とハルシネーションリスクの回避を実現しています。
本機能の事前設定は生成元ファイル(PDFやPowerPoint、Word、Excel、テキスト、CSV形式のファイル)をアップロードするのみで、即利用が可能です。
Q&A自動生成機能
CAIWA Service ViiiのRAGには、クリック1回でQ&Aを自動生成する機能があります。RAGにアップロードした生成元ファイルから生成されるQ&Aは、CAIWAの知識データやチャットの回答データとして活用します。
言語認識精度が高くメンテナンスも楽なCAIWA Service Viii
CAIWA Service Viiiは、RAG以外にも以下のような特徴をもっています。
高い言語認識精度
CAIWAは、高度な概念辞書と自然言語処理アルゴリズムを活用することで、少ないデータ登録でも高い言語認識精度を実現しています。とくに正確な理解が難しいとされる日本語においては、豊富な利用実績を背景に高い信頼性と安定性を誇ります。また、英語にも対応しており海外での利用実績もあります。
簡単構築、らくらく運用
直感的に扱える管理ツール「CAIWA ROBOT MANAGER」と、ChatGPT API連携機能で構築・運用の手間を解消しています。とくにRAG機能の事前設定は、ファイルをアップロードするのみです。
各種連携機能多数
ChatGPT APIやMicrosoft Teams、LINEとの連携、翻訳システムとの連携による多言語対応など、外部システムやアプリケーションと連携することで幅広い顧客ニーズに対応します。
導入コストについて
Q&A自動生成機能はCAIWA Service Viiiの標準機能で、他の応答機能は一律で低価格となっています。詳しくは株式会社イクシーズラボの営業担当に直接お尋ねください。
まとめ
バックオフィスが扱う規程や業務手順は、各社によってその内容が大きく違うものです。一般的なチャットボットではインターネットにある情報はそれらしく回答できるものの、各社独自の規程や手順は回答できません。RAGを活用したチャットボットは、このようなお悩みを解決しバックオフィスの業務量低減に寄与するシステムです。
ハルシネーション対策が整ったRAG機能搭載!
AIチャットボットCAIWA Service Viii
Viiiは、導入実績が豊富で高性能なAIチャットボットです。学習済み言語モデル搭載で、ゼロからの学習が必要ないため、短期間で導入できます。導入会社様からは回答精度が高くメンテナンスがしやすいと高い評価をいただいています。